小田原の自転車専門店

80年以上自営業を続けたお店のことを初めてのトークショーでお話しました

小砂恵三トークショー

このページは、第1回小砂恵三トークショー「Meu Lado」を振り返る開催記録です。

講演内容をまとめたレポートではありません。

あの日、その会場で皆さまと共有した時間や空気、そして私自身が感じたことを、未来へ残すブランドアーカイブとして綴ります。

初めてのトークショー

2026年6月27日。

あの日のことを振り返ると、最初に思い浮かぶのは講演で何を話したかではありません。

2階へ続く階段の途中で、司会の方の声を聞きながら待っていた、あの数十秒です。初めてのトークショーでした。ほんの数十秒だったはずなのに、とても長く感じたことを今でも覚えています。

司会の方が、参加者の皆さまへ録音や動画撮影についてのお願いをされています。参加者の皆さまのお顔が写らないよう、撮影は会場後方からのみ行うことなどのご案内が終わると、トークショー開催のアナウンスが私の耳にも届きました。

それでは、第1回小砂恵三トークショー『Meu Lado』を開催いたします。

うまくお話しできるだろうか。私が大切にしてきたことを、きちんと届けられるだろうか。

そんなことを考えていると、そのとき、会場からあたたかな拍手が聞こえてきました。

その拍手に背中を押されるように、私はゆっくりと階段を下りました。

入口の引き戸を開けると、参加者の方たちが笑顔で迎えてくださいました。

テーブルや椅子の配置もあり、お顔が見えた方もいらっしゃって、その笑顔を見た瞬間、不思議と肩の力が少し抜けたことを今でもよく覚えています。

私が座る少し高めの椅子まで歩き一礼をしてから腰を掛けました。マイクのスイッチを確認し、皆さまへご挨拶をします。

「皆さん、こんばんは。コスナサイクルの小砂です。」

「本日は、台風7号の影響でお足元が悪いなか、お集まりいただき誠にありがとうございます。」

この日の関東地方は台風7号と8号が接近していました。

最初のご挨拶を終えたあと、少し照れ笑いを浮かべながら、こんなことをお話ししました。

「普段はお客様とお話することがもちろん多いのですが、このように皆さまの前でお話することは緊張します。」

そう言うと、会場から自然と笑い声が聞こえてきました。

その笑いに、私の方が少し救われたような気がしました。

初めてのトークショーという緊張は、そのままでした。でも、皆さまの笑顔や笑い声のおかげで少し肩の力が抜けたことを覚えています。

あの日は、私が1人で話す時間ではありませんでした。

会場の方たちと一緒につくっていく時間だったのだと、今振り返るとそう思います。

Meu Ladoという名前に込めた約束

今回のトークショーには、「Meu Lado(メウラード)」という名前を付けました。

この名前には、私にとって忘れることのできない思い出があります。

以前、私が手書きで発行していたニュースレターにも、「ちょっと役立つ情報―Meu Lado(メウラード)」という名前を付けていました。

実は、「Meu Lado」という名前を考えてくださったのは、若くして亡くなられた1人のお得意様です。

ロードバイクやマウンテンバイクでご一緒することも多く、私にとって本当に大切なお得意様のお一人でした。

ある日、その方が、「何かチームネームを考えない?」と声をかけてくださり、一緒に考えてくださったのが「Meu Lado」という名前です。

ポルトガル語で直訳すると「私のそば」。
スラングでは、「君は僕の仲間だよ。」そんな温かな意味を持つ言葉だそうです。

名前を考えてくださってから数年後、その方は若くして旅立たれました。

「いつか、本当に大切な場面がきたときに使おう。」そんな気持ちが、ずっと心のどこかにあったんです。

最初にその想いを込めたのが、手書きのニュースレターでした。

そして今回、トークショーの準備を進める中でスタッフの皆さんから、「この名前を、今回のトークショーにも付けませんか。」そんな提案をいただきました。

私は、その言葉を聞いたとき、迷うことはありませんでした。

この名前で始めよう。

あの日、会場へ足を運んでくださった皆さん

準備を支えてくださったスタッフの皆さん

地域でつながってきた仲間

そして、もう直接お会いすることはできませんが、この名前を残してくださった大切なお得意様。

いろいろなご縁が少しずつ積み重なって、第1回のトークショーにつながっていました。

だから私にとって「Meu Lado」は、トークショーのタイトルではありません。

この言葉を口にすると、あの頃のことや、お世話になった方々の顔が今でも自然と思い浮かびます。

私にとって「Meu Lado」は、これからも大切にしていきたい言葉です。

私がお店で積み重ねてきたこと

最初の挨拶で少し肩の力が抜けた私は、そのまま本題へ入りました。

最初に皆さまへお話ししたのは、この言葉です。

「今日は、私が普段どんなことを考えながらお店を続けてきたのか、その空気感みたいなものを、そのままお伝えできたらと思っています。

この一文だけは、自分でも少しゆっくり、少しだけ力を込めてお話ししました。

私は特別な経営方法をお話ししたかったわけではありません。

毎日お店を開け、お客様と向き合う中で、自然と大切にしてきたことがあります。

そのことを、そのまま感じていただけたら。

そんな思いで、まずは私がコスナサイクルの店主になるまでのことからお話ししました。

そんな話をしたあと、私はこう続けました。

派手な経営をしたわけでもなく、大きな広告を出したこともありません。でも、1つだけ、ずっと意識してきたことがあります。

信頼を削ることをしない。

この言葉は、この日どうしても皆さまへお伝えしたかった言葉です。

そして続けて、

「だから私は、常にお客様の立場に立って考えることを大事にしてきました。今日は、そんな積み重ねの話を少しできたらと思っています。」

そうお話ししてから、宮田工業で営業をしていた頃の「窓ふき」の話へ入りました。

皆さまとつくった温かな時間

地域には、小さなお店がたくさんあります。

それぞれのお店にしかできないことがあって、それぞれに積み重ねてきた時間があります。

その時間の先に、少しずつ信頼が育っていくのだと思っています。

私自身も、まだまだその途中です。

今でも迷うことがありますし、これで良かったのかなと思う日もあります。

でも、だからこそ「信頼を削ることなく」ただ、それだけを大切にしながら、毎日少しずつ積み重ねています。

派手ではありません。効率も、決して良くないと思います。それでも、小さなお店というのは、本来そういうものなのかもしれません。

急に大きく変わることはありませんし、一日で信頼が生まれることもありません。

気が付くと、「あのお店、ずっと続いているね」

そんなふうに思っていただける

私は、そういうお店でありたいと思っています。

最後になりますが、私たちには、ひとつの理念があります。

お客様に正しい知識を持って提案し、世界のヒトとヒトをつなぐ架け橋に

今回お話ししたことは、すべてこの言葉につながっています。

これからも、この想いを大切にしながら、一日一日を積み重ねていきたいと思います。

そして、この日、この時間をご一緒してくださった皆さまにも、心より感謝申し上げます。

本当に、ありがとうございました。

トークショーの余韻

講演が終わると、会場から温かい拍手が聞こえてきました。

私はその拍手の中、ステージを降り、参加者の皆さまの後ろを通って2階の控え室へ上がりました。

会場では、トークショー後に当日のスペシャルディナーコースが提供されていました。そのままのお席でゆっくり過ごしていただけるよう、スタッフの皆さんが特別メニューをご用意していたのです。

一休みしてから再び会場へ戻りました。

参加してくださったお一人おひとりに、感謝の気持ちをお伝えしたかったからです。

皆さんへご挨拶を終えると、一足先に会場を後にしました。

感謝の気持ちでいっぱいで帰宅しました。

花束に込められた想い

初めてのトークショーのお祝いとして贈られた、白いユリを中心にアレンジされた花束。
相手を思い浮かべながら選んでいただいた、忘れられない花束

その日、遠方から駆けつけてくださった同業の方がお2人いらっしゃいました(当初ご来場いただくのは友人や知人ばかりかと思いましたがほとんどが初めて来ていただいた方たちでした)。

今回、初めてのトークショーのお祝いとして大きな花束を持ってきてくださったんです。

それだけでも十分うれしかったのですが、後からその花束に込められたお話を伺いました。

花屋さんへお願いする時に、私の顔写真を見せて、「こんな人なんです。」と、私の性格まで伝えてくださったそうなんです。

その話を聞いたときは、本当に驚きました。

普通なら予算や色合いを伝えてお願いすることが多いと思います。

でも、その方は、花ではなく、贈る相手のことを伝えてくださっていたんです。

「なんて粋なことをされるんだろう。」

そう思いました。

もし私も誰かへ花束を贈る機会があったら、この心遣いはぜひ真似をしたい。

そんなふうに感じました。

トークショーでつながった、7年前のご縁

参加してくださった皆さまへご挨拶をしていたときのことです。

ご夫婦で参加されたお客様が、笑顔で私に声を掛けてくださいました。

「実は、小砂さんから7年前にいただいた手書きのはがき、今でも大切に持っています。」

その言葉を聞いた瞬間、私は思わず驚いてしまいました。

そのお客様には、7年前にロードバイクをご購入いただきました。私は新車をご購入いただいたお客様へ、一台一台、感謝の気持ちを込めて手書きのお礼状を書いています。

思わず、

「本当ですか。」

「ありがとうございます。」

それしか言葉が出ませんでした。

一枚の手書きのはがきを、7年もの間、大切に保管してくださっていた。

そのお気持ちが、本当にうれしかったんです。

講演では、たくさんのお話をさせていただきました。

でも、あの日最後に私の心へ残ったのは、この一言でした。

「今でも、大切に持っています。」

手書きのお礼状を書き続けてきて、本当によかった。

そう思えた、忘れることのできない出来事でした。

第一章の終わりに ― 人とのつながりに感謝して ―

振り返ると、この1日はあっという間でした。

でも、その中には祖父の時代から続いてきた時間や、父から受け継いだ言葉、そして、お客様と積み重ねてきた日々が静かに重なっていました。

私自身、この日を迎えるまでに、多くの方に支えていただきました。

会場をご用意くださった皆さま。

準備から当日まで関わってくださった皆さま。

そして、この時間を一緒に過ごしてくださった皆さま。

心より感謝申し上げます。

私が、本当に残したかったのは、講演でお話しした内容だけではありません。

その日に流れていた空気や、交わした言葉、そして皆さまと過ごした、あたたかな時間です。

いつの日か、このページを読み返したとき

「あの日、こんな時間があったね。」

そんなふうに思い出していただけたら、それ以上うれしいことはありません。

これからも、時代は変わっても、大切なものを見失うことなく、一日一日を積み重ねていきたいと思います。

2026年6月27日

小砂 恵三

この記事について

今回ご紹介した内容は、第1回小砂恵三トークショー「Meu Lado」でお話しした内容の一部を抜粋・再構成したものです。

当日は、このほかにも自営業を続ける中で大切にしてきたことや、お客様との出会いなどについて、会場の皆さまと時間を共有しながらお話ししました。

トークショーは、言葉だけでなく、その場で生まれる空気も一つの時間だと思っています。

この記事を通して少しでも興味を持っていただけましたら、また次回、会場で同じ時間をご一緒できましたら幸いです。

投稿者プロフィール

小砂恵三
小砂恵三コスナサイクル店長
宮田工業(現在:ミヤタサイクル)での研修を得て、インショップ形式の自転車店の店長に就任。その後家業を継ぎ自転車のメンテナンス、販売に従事して35年以上。
自転車専門資格として「自転車安全整備士」「自転車技士」「スポーツBAA PLUS」「自転車組立整備士」「BAAアドバイザー」などを保有。
現在はコーダブルームやパナソニックといったライトスポーツ自転車から電動アシスト自転車までを幅広くカバーするサイクルショップ、コスナサイクルを運営。