小田原の自転車専門店

自転車屋さんになるにはまずはスキルと場所の整理を

自転車屋 なりかた

※記事の中にアフィリエイト広告を利用しています。

最近ニュースなどでも話題に挙げられる副業。

店長の私もさまざまな副業が展開されているのを見るようになり、こんなお仕事もあったのか。と、驚くことがあります。

そんな中で自転車に乗ることを趣味にされている方が、自転車屋さんを副業にしたいと話されているのも目にしてきました。

たしかに、自転車店は出店ピーク時に比べ大幅に減少し「修理難民」と呼ばれる近隣に自転車修理を行う店舗がまったくない、という状況に陥る方も多数いらっしゃるようです。

当店のお客さまの中にも自宅近辺に店舗がないためお車で修理のお持ち込みをいただくことも少なくありません。

そういう意味では、ビジネスとして狙い目なのでしょう。

しかし、実は自転車店の運営の仕方や必要なモノ・コト、という情報は意外にも少なく、二の足を踏まれている方も多いようです。

そこで、コスナブログにて「自転車店のやり方」というものを連載してみようと思います。

細かな修理スキルなどはあまりに細分化されるため、まずは大枠からご説明していくので、よかったらお付き合いください。

どのような自転車に対応できるのか整理しよう

おそらく自転車修理などを副業にされよう、と考える方であればある程度の修理の知識はお持ちだと思います。

しかし、所有している自転車についてはすべて自分でリペアしているので、なんでも対応できるだろう、と考えるのはすこし危険です。

まずはご自身がどのような自転車の修理に対応できるか、を整理する必要があります。

最初に知っておかなければいけないのは「自転車」と聞いて想像する車両は実は人によってさまざまであることです。

スポーツバイクのロードバイクやマウンテンバイク、生活の足としての電動アシスト自転車やシティサイクル(ママチャリとも呼ばれますね)、通勤・通学に使用されるクロスバイク、小さいお子さんと行動を共にするためのチャイルドシート搭載車、サーフボードなどと併用するビーチクルーザー、車に積んだり輪行して持ち運びできるフォールディングバイク、などが主に挙げられるでしょう。

利用者の目的別に種々様々なメーカー、モデルがあるため、お客様が乗っている車両は千差万別です。

街中で見かける自転車は、同じ車両であることはほとんどないですよね。

このように多くのメーカー・モデルがある、自転車のような工業製品を仕事として取り扱う場合に重要なのは“互換性”です。

たとえば、ここにブレーキシューと呼ばれるいわゆるブレーキのパッドがあります。

一般自転車用ブレーキシューBAA対応

このブレーキシューは自転車の前輪に使用されるものです。

これ「どの自転車にも使用できる」というものではありません。

シティサイクルであれば多くのモデルに装着できますが、現在出回っているロードバイクは主にディスクブレーキ、クロスバイクではVブレーキ又はディスクブレーキというシステムが搭載されているため、仕様どころかブレーキユニットの構造自体が異なります。

また、電動アシスト自転車にこのシューを使用すると推進力の違いからすぐに摩耗が始まり場合によっては数ヶ月程度で再度交換になることもあり、電動アシスト自転車用に設計されたブレーキシューを使用する必要があります。

フォールディングバイクやクロスバイクなどではVブレーキという種類が採用されることが多いため、こちらも互換性はありません。

これはざっくりとした内容のため実際にはもっと細分化されますが、このように、自転車には搭載されているパーツや部材によって互換性の問題が発生し、すべての車両に共通のパーツを使用するということはできなくなっています。

自転車用工具についても互換性の問題がありこのパーツ交換修理にはこの工具が必要。この調整にはこの工具が必要と、用意するものが変わる部分があります。

修理においては互換性を確認しながら作業を進めていくため、ご自身のスキルやパーツ・工具の用意、を確認し、どの車両であれば対応できるのかをまずはまとめましょう。

今はブレーキを例に挙げましたが、これがロードバイクなどの場合はフレームとコンポーネントと呼ばれる駆動系、ブレーキ制御システム、ホイール関連やハンドル周りなどそれぞれに互換性が存在し、更に年式などの違いによる互換性なども把握する必要があるため、安易に自己判断で形状的に取り付けられるからと使用することでなんらかのエラーに遭遇する確率が上がる、という問題もあります。

電動アシスト自転車の場合は、主に電子パーツの互換性が問題です。

例えばハンドルに装着されている電動ユニットの手元スイッチひとつをとってみても互換性の確認作業が必要になります。

しかもこの仕様は年式やモデルによっても変わるので、正しい互換性を調べるにはメーカーのディーラーマニュアルを元に調べる必要があります。

ロードバイクにしろ電動アシスト自転車にしろ、互換性を調べるには上記のディーラーマニュアルを読む、もしくは公開されているリストで検索をする必要がありますが、こちらは一般に公開されていないものも多く(シマノなどは一般公開しています)、公開されているものも利用が難しかったりするので、メーカーに問い合わせをする必要なども出てきます。

そうするとそのメーカーとの取引がある人でしか分からないことも出てくるため、副業としてロードバイクや電動アシスト自転車をメーカー、モデル問わずに修理、調整をする、ということにはやってみたけれどできなかった、という危険がつきまといます。

ロードバイクや電動アシスト自転車については、ある程度の知識、で対応せず、パーツや車両、モデルについて一定の基準の知識を広く持っている方がご対応されたほうがいいでしょう。

ご自身の乗っているロードバイク、電動アシスト自転車についてはセルフで修理できる場合でも、この分野については簡単な気持ちで副業として参入されることはあまりオススメしません。

では、シティサイクルなどはどうか、と言われるとこちらは多くのモデルが互換性を持って対応できるようになっています。
もちろん専用パーツを使用している場合もありますのですべてではありません。

電動アシスト自転車も、電子パーツ以外の部分では互換性のあるものもあるため、すべてが対応できない訳ではありません。

まずはご自身のスキルやお持ちの工具などで、どこまで対応できるのかなにをしてはいけないのか、この2つを割り出してみましょう。

実際、当店でもお受けできない車種やモデルがあり、ご購入店さんにお持ち込みいただくほかないため修理や調整をお断りすることもあります。

安易にお預かりしたことで車両をお持ち込みいただいたお客様にご迷惑をかけるだけではなく、ご自身も苦境に立たせられるため、自転車店を副業とするならば「お断りする勇気」も重要なひとつだと思います。

自転車を修理・保管するスペース

続いて重要なのがスペースの問題です。

これは修理を専門とする場合にも大切です。なぜかと言うと車両をお預かりすることがあるからです。

自転車のパーツには互換性がある、というお話をしましたが、この互換性を調べたり、交換用のパーツが手元にない場合にはメーカーやパーツ専門店からお取り寄せとなります。

この際に重要なのは「店舗型」か「出張型」かという違いです。

店舗型であれば車両保管するスペースにお預かりすることができます。

しかし、副業となるとスペースは限られるでしょう。

そのため、自転車のどのサイズを何台保管できるか確認しましょう。

修理するスペース保管するスペースが共有の場合、あまりにお預かりした台数が増加したりすると修理スペースがなくなり大変です。

また、保管時には盗難防止などのセキュリティの問題もあるため、許容量を把握して望む必要があります。

出張型店舗の場合には、やり方を考えましょう。

出張の際には、「特定の場所に定期的に出張修理店を開く」、「お客様の指定場所に直接出向く」という2種類があると思いす。

前者の場合は、修理作業にお時間がかかる時は、一端お客様の連絡先をお聞きして修理完了後に再度来店をお願いしてお持ち帰りいただく。もしくは一時的に安全に保管できる場所を出張地に用意する。

後者の場合は互換性や必要なパーツを割り出すための情報を確認してから訪問する、など、やり方もさまざまです。

現在は無店舗型の自転車店を出店されている方もたくさんいるため、他のケースではどのように対応しているか調べるのもいいですね。

いずれにしろ、お預かりする際には盗難のリスクがないようにしなければいけないため、その分コストがかかります。

ご自身のスタイルに見合った依頼→修理(場合によってはお預かり)→納品、の流れを想定し必要な設備を用意しましょう。

修理するスペースはどの程度がいいのか、というところですが当店は幅約1.4m×長さ約2mというスペースで修理しています。

コスナサイクル メンテナンスルーム入り口

 

コスナサイクル メンテナンスルーム工具棚

画像のように工具は壁掛けと棚置きにしています。

こちらも工具箱に一括にして入れるか、取りやすいように当店のように分けるかという選択肢があります。

工具はある程度の堅牢性を持っているので、工具同士がぶつかってもそうそう壊れることはありませんが、スムーズに作業するには整理して置ける場所を用意しておいたほうが後々かなり楽に作業できます。

またいくら堅牢性があるといっても強く衝撃を与えれば破損します。

とくに出張型の場合、重い工具類を1つの工具ボックスなどに入れておくと相当な重量となるため、車での移動時にカーブなどで遠心力がかかると強い力で工具箱がすべってしまうこともあります。

落としたりすべってどこかにぶつけたりしないように固定する方法を考えましょう。

修理スペースの床を考える

コスナサイクル メンテンナンスルーム電動アシスト自転車用修理台

修理をするスペースを確保したら次は床に注目しましょう。

既に自転車店を運営している方ならお分かりかと思いますが、理由は以下の4つです。

  1. タイヤでかなり汚れる
  2. パーツが落ちたときに分かりやすく
  3. 工具の落下破損を防ぐ
  4. オイルやグリス、自転車の汚れが床に染みるのを防ぐ

1.タイヤでかなり汚れる

床の自転車タイヤ痕の汚れ

自転車は舗装路や水たまりなども走るのでタイヤの表面はかなり汚れています。

これが重量のある車両を入れて作業する場合に床にこすりつけるように汚すためにお掃除をしてもなかなか落ちません。

特に木製の床などは汚れのほかに小石などがタイヤのトラッド(滑り止めの溝)に挟まっていると傷付けるだけでなくへこみなども発生させるので注意が必要です。

2.パーツが落ちたときに分かりやすく

自転車小ねじ類

自転車のパーツはバイクや車に比べると小型軽量のものが多く、コンクリート床などに落ちると想定していなかった方向に飛んでいきます。

これが本当に見つかりません。

特に棚や工具入れ、ほか物品などがたくさん置いてあるスペースだと隙間に入り込んでなんとなか見つけ出してもそうそう取り出せないという事態にも陥ります。

もう一度言いますが、見つからないときは、ほんっっっとうに見つかりません!

なんでこんなところに…。という場所に入り込むことがあるので作業場の床はキレイに保ち、落としてしまっても見つかりやすい環境にしておくことが重要です(メッキ塗装のパーツが多いので黒い材を床に敷いておいてもいいですよ)。

そのため、元々置いてあるものが多い場所、は事前にそれらを移動して問題ないか確認しましょう。

自転車店や車の工場などでは落としたパーツを見つけやすくするために床面を緑色などの塗料で塗っているところもあります。

3.工具の落下破損を防ぐ

コスナサイクル作業スペースの床

自転車のパーツは小型軽量ですが、工具はそこそこ重量があります。

作業中は手袋をしていてもグリスやオイルなどが付着してすべりやすく、慣れていない人だと工具を落としてしまうこともよくあるんです。

その際に床がコンクリートのような堅い素材ではドライバーの先端などの一部を破損させてしまったりします。

これを防ぐためにも当店では画像のような弾力のあるシートを敷いています。

慣れるとそう起きるトラブルではありませんが当初は対策をしておいたほうが無難です。

4.オイルやグリス、自転車の汚れを防ぐ

スプロケット外さずワコーズチェーンクリーナーをスプレー

自転車のチェーンに塗布するオイルや潤滑剤、グリスなどは液だれすることが多く、床を汚してしまいます。

またスプレータイプのケミカル製品は目に見えない程度の霧状になりメカタオルなどで当て布をしても床に落ちたり、近くにあるものに付着することがあります。

そのスペースを作業のみに使用する場合多少であれば気にならないでしょうが、オイルやグリスが染みこむ場合は汚れを除去しても残ってしまうことがあるので注意が必要です。

また外環境を走行する自転車は思わぬ場所に水分がたまっていたり、路上のホコリや汚れが付いていることがあり、修理中に想定外の場所から漏れ出ることも。

その場合も床を相当汚しますので、注意してください。

ときおりあるのはサドルクッション内の水分です。

サドルの表面や見えにくい場所に傷がありそこから内部のクッションに雨などの水分が吸収されている場合、作業中に軽い圧力をかけるだけでしみ出します。

思わぬことがあるので敷物を用意するなどの対策が必要です。

また、敷物のホコリや汚れなどは、1台作業が完了するごとに都度掃き掃除や目立つ汚れを落としておくといつも清潔で作業も快適に行えますので習慣づけしましょう。

第1回はここまでとなります。

自転車屋さんになるには国家資格などは必要ないので参入障壁はそこまで大きくありません。

あとは、知っている・経験しているかどうか、が物を言います。

一緒に勉強して、素敵な自転車屋さんになってくださいね。

 

こちらのコスナブログ記事では、社団法人「自転車技術者協会」の中根様との副業としての自転車店についての対談を掲載していますのでご参照ください。

 

教えてコスナ店長!

自転車屋さんって、どうすればなれますか?

第2回はこちらを参照ください。

第3回はこちらを参照してください。

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コスナブログ編集部
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