小田原の自転車専門店

自転車店での工具を選ぶための考え方と店長愛用工具

自転車屋 なりかた

こんにちは、コスナブログ編集部です。

自転車屋さんのなりかた講座第3回目

今回は工具について。

コスナ店長の愛用工具の一部をご紹介します。

「これだけあれば自転車店を始められる」という企画ではありませんが、工具の選び方やお店を営業する上での用意の仕方についても記載していくので自転車店の工具への考え方としてご覧ください。

また、人によって体のサイズや手の大きさ、筋力などはそれぞれにちがうのでコスナ店長と同じ工具を購入したら必ず同じクオリティで使用できる、ということはありません。

この記事を参考にご自身の使い方や営業スタイルに合った工具をセレクトしてください。

ドライバー

VESSEL ドライバー

ドライバーは自転車業にかかわらず工業製品を扱う中で重要な工具。コスナ店長は日本メーカーVESSELのドライバーをよく使用します。

モデルはメガドラの貫通ドライバーの2番(番数で先端の太さが変わります。自転車で一番使用されるのは2番です)

グリップが太く滑り止めが効くクッション性のあるグリップなので使用感がいいです。

自転車は屋外利用されることが多いことからネジがサビついて簡単に外れないことがよくあります(特にネジのクオリティが低いノーブランド車両)。

そのためドライバーにかなりの負荷をかけることもあり、ドライバーの先端部分がなめてしまうことも多いので一度購入してずっと使用できる訳ではありません。

VESSELの価格帯は1,000円前後なのである程度荒く使用してもすぐに交換できるところも非常にバランスがよいです。

実際MACTOOLSやUNIORなどのメーカーのドライバー、ラチェットドライバーなど、いろいろ試してみましたが価格面と機能面のバランスがいいのはVESSELでした。

こちらも相性は人によりけりですが、もしもドライバーメーカーに迷われている人がいれば一度試してみていただくことをオススメします。

ドライバーの先端部分は通常のフィットを使用しています。

こちらの画像のように、メガドラのシリーズにはJAWS FIT という先端部分にギザギザとした滑り止め加工のあるモデルもありますが、力加減によってクオリティの低いネジの場合はなめやすく、コスナでは使用していません。

手の力が弱い方だったらJAWS FITで先端のすべりを防止するのもいいかもしれませんね。

MACTOOLS ドライバー

あまりにもネジが外れにくい、もしくはネジの素材や加工などによって注意が必要なものはMACTOOLSのコチラのドライバーを使用しています。

MACのドライバーはVESSELに比べると5〜6倍程度の金額のため、精度が桁違いです。

VESSELだけでも対応できないことはありませんが精度のいいものも揃えておくと作業効率の幅が広がります。

また貫通ドライバーを選択するのはネジに先端をあてがって、ドライバー底面をハンマーで軽くたたくことがあるため。

こうすることでサビで固着したネジに振動を与え外しやすくすることができます。

それでも外れないことはありますが…。

ネジの駆動部がつぶれてしまっている際も底面を叩いて再度溝を切ることで回すことができるようになる場合もあるので、自転車店でのドライバーには貫通型がオススメです。

以上は主に2番のドライバーです。実作業ではもっと小さなネジなどを使用するために番数のちがうドライバーなども用意しています。

マイナスドライバーはナットキャップの外し作業やケーブル先端を動かす際にも使用しますのでこちらも1本は必要となりますね。

ドライバーの使い方については別記事にもまとめてあります。リンクはこちらから。

※もしもドライバーを購入するときには、かならず一度実物に触ってみてください。最終的にはハンドルグリップの素材や握り心地により使用感がかなり変わるので、個人の好みが分かれます。手の大きさや指の長さ、太さによって同じメーカーのドライバーであっても仕様やモデルが変わるだけで「Aは使いやすいけれどBは使いにくい」ということが起こりやすい工具です。

レンチ・スパナ

MACTOOLS レンチ

レンチとスパナの呼び方はお店によっても変わりますが(正式には国別での呼び方のちがいもあります)、コスナサイクルでは画像真ん中のタイプのような開口部のあるものを“レンチ”と呼んでいます。

自転車で特に多く使用するのは10mm、8mmのレンチ。

主に10mmは一般車の前後輪のブレーキユニットのフレームへの固定に使用され、8mmはバスケットや古いタイプのブレーキユニットの固定に使用されています。

自転車での使用では、10mmや8mmのナットの締め付けは軽めのトルクなので先端のかかり具合よりも作業のスピーディーさが求められることが多く、ラチェット機能も付属しているコンビネーションラチェットレンチの登場頻度も高いですね。

ラチェットのみの工具というのもありますので、好みで使い分けてください。

コスナ店長はMACTOOLSとSNAP-ONのレンチを使用しています。

SNAP-ONのラチェット機構はギアの歯数が多く細かく動かすことができ微調整が効くのがすばらしいです。

ただしすべてのレンチがMACTOOLS、SNAP-ON製ではなく、一部安価なホームセンターモデルのレンチも使用します。

こちらもドライバーと同じ考え方で、主に斜めにナットが入っていたり、極端に固着している場合など、工具が破損する可能性のあるような場合に使用します。

逆に固着しすぎていたり、ナットの角がすでに少しなめていたりする際にはMACTOOLSやSNAP-ONでないと外せない、ということもあるので使い分けにはある程度の経験が必要です。

お店ごとの考え方にもよりますが、余裕があれば2種類用意しておけると非常に便利です。

レンチについては別記事でも解説しています。リンクはこちらから。

ラチェットハンドルとソケット

MACTOOLS ラチェット

ラチェットハンドルは自転車のホイールの付け外しに使用される非常に重要な工具です。

自転車のホイールの付け外しは特によく行う作業なので使用頻度が高くなります。

使用しているのはMACTOOLS製のハンドル。

ラチェットハンドルにはグリップ付きとグリップなしがありますが、コスナ店長が愛用しているのはグリップありモデル。

「グリップなしのほうが力をかけやすい」という人もいれば「グリップがないと腕の力を伝えにくい」という人もいるのでどちらがいいとは一概に言えない部分です。

こちらの工具の使用歴は20年近く。レンチと同じくギア数が多く微調整が効き、耐久性が高いのがセレクトの理由です。

またラチェットの長さは約21cm。市場にはもっと短いものもあればもっと長いものもあります。コスナではおおむね21cm前後を推奨しています。

自転車での使用ではこのくらいの長さが取り回しもよく、力のかけ具合にも問題はありません。

ナットの固着があまりにもひどい場合にはハンドル部分にちょうどよい太さに加工した鉄パイプをはめてテコを効かして使用します。

なのでこのサイズのMACTOOLSを買いましょう…、とは、なりません。

個人によって合うサイズやにぎり心地が変わるからです。

画像は上から順にホームセンターモデル、MACTOOLSのグリップなし、KTC製のもの。

一見すると同じように見えますが、柄の太さや握りの加工がまったく違いますよね。

KTCのものは少し短めです。一方、MACTOOLSは柄のみ太めで握りを長くとられています。

ホームセンターモデルでは握りの部分に加工がほとんどされていません。

数センチ短いだけでもかなり力の入れ具合が変わる上、溝が切ってあることで多少オイルが手袋に付着していてもすべりにくくなったり、エンド部分の加工によって工具から手に伝わるナットの締め具合のフィードバックが変わります。

そのため「高額なものが一番!」という訳ではありませんし「初心者だから安価なものでいいか」というものでもありません。

現物を手にもって感触を確認してから購入されたほうがいいでしょう。

自転車と同じでデザインや価格だけを見て購入すると後で後悔することになる場合もあります。

MACTOOLS ソケット

先端ソケットも同じくMACのものを使用しています(ソケットとラチェットハンドルの差し込み角の適合があるので注意)。

ソケットはさまざまなメーカーが販売していますが金額によって精度が変わります。

MACTOOLSのものはソケットの中でも高額の部類です。

さきほどまでの工具類と違い直接手で触れない工具では精度が高いほうが問題が起こりにくいので、こちらはある程度のクオリティを保った信頼できるメーカーのものを購入することをオススメします。

ハブナットなど、自転車の中でも重要な部分の作業では締め付けトルクが大きくなるため、ちょっとすべった、かかりが悪い状態で回した、といった場合にリカバリー不能なトラブルに発展してしまう恐れがあります。

しかし決して安価なソケットがダメという訳ではありません。

大きいトルクのかかる部分で使用する場合には工具自体の摩耗も発生するので、安価なものを定期的に買い替えていくという考え方を採用している店舗もあり、使用する人の好みの問題が大きいですね。

この場合はソケットの状態をある程度判断できる経験が必要なので初心者の方であればあまり冒険をするのはオススメできません。

コスナ店長は経験上ソケットや工具に過負荷をかけることは少ないですが、作業になれていない人では価格の高いソケットでもわりと早めにダメにしてしまうこともあるので一概に言い切るのは難しいですが、できればそこまで安価なものを選択しないほうがいいでしょう。

ソケットは6角(かく)タイプ

ソケットについてもう1つ。ソケットの仕様には12角(かく)と6角の2つのタイプがあります。

こちらはMACTOOLSのものではありませんが画像左側が12角、右側が6角です。

12角のほうは角のかかる部分が多いためソケットをナットにはめやすいという特徴がありますが、コスナサイクルでは主に右側の6角を使用しています。

というのも、ホイールを固定するハブナットには車両のクオリティーにより極端に角(かど)がなめやすいものがあるほか、何度か付け外しをしているものの中には既に若干、角をなめしているものもあります(ノーブランドの車両では新車でも組み立て時に電動工具を使用して角をなめしているものもあり)。

6角はしっかりとナットの角をホールドするので自転車、とくに一般車でメーカーを問わず作業する分にはこちらのほうが圧倒的に使い勝手がいいです。

ちなみにソケットは少しロングなものが多用されます。

内装3段ハブの固定ナット部分にはロングのソケットでないとうまく使用できないときがあるので作業効率的に必須です。

反対側のナットはナット自体が長くなっているので、そちらに使用するときにも必要となります。

KTC デジラチェ

最後にデジタルトルクレンチ、通称デジラチェも必要です。

コスナではKTC製のものを使用しています。小さいトルクは使用できない場合もあるのでこれ1つですべてカバーできる訳ではありませんが、モデルやメーカーによって(特にスポーツバイクは)締め付けトルクが厳しく設定されているものもあるので、大切な工具です(ペダルやハブナットなど。ハンドル周りなどはアナログやトルクドライバーを使用しています)。

ペダルに使用するには別途ペダルレンチアダプターを用意する必要があります。

デジラチェについては別記事にもまとめてあります。リンクはこちらから。

六角レンチ

EIGHT 六角

六角レンチは価格幅が広く選択肢の豊富な工具ですが、コスナサイクルでは日本メーカーのEIGHTのものを使用しています。

8年ほど前にそれまで使用していたものから買い替えたのですがこれがすばらしい機能性でした。

六角レンチをよく使用する人はご存知だと思いますが、普通の六角は先端がなめやすい!

EIGHT 六角

さきほど8年前と表記しましたが慣れている人ならそこまで使用しているならすぐに買い替たほうがいいよ、と思ったかもしれません。

EIGHTのものは耐久性が高く、いつまでも先端のかかりが抜群で、いまだに購入当時のような使用感です。

六角は先端のほかに工具自体の長さも大切で、長いもののほうが力がかかりやすく固着した部分は長めのものも使用しています。

またフレームの間などでは六角が長いと十分に回すことができないためハンドル付きの六角も使用しています。

EIGHT 六角

こちらもEIGHTのものですね。

六角については別記事にもまとめてあります。リンクはこちらから。

 

以上が基本的な工具の一部です。

基本的には有名メーカーの間違いのない製品を使用しています。

個人で週末に少し工具を使用するのとちがい、自転車店ではお客さんの車両を預かり毎日何台も作業をおこないます。

そのために工具自体の負荷や自転車への負担を考えて作業しなければいけません。

たとえば、今日タイヤチューブ交換をした車両が、何年か後に再度交換に来店したとします。

その際に、前回の修理でナットなどを痛め今回作業ができない、といった事態は論外です。

次に修理するときにも同じクオリティでお客さんに車両をお返しできるよう、考えて工具を用意しましょう。

最終的には個人の好みが反映されますが、どこかのお店で使用していたから、有名なメーカーだから、だけではなく、自身の体格などにあったものを使用することで作業効率も格段に上がります。

 

実際に用意する工具では、ほかにロックリングやナットの特殊型に対応するための専用ソケット(画像中央上側の黒い工具。ここに映っているのは一部です)、チェーン引きにギア関連の専用工具など、細かい部分ではさまざまな工具が必要となります。

ケミカル用品についてはこれまでも何度か解説しているのでスルーしますが、基本的にはWAKO`Sで揃えています。

専門性の高い工具についてはご自身の対応する車種によっても用意するべきものは変わりますが、自転車の専門工具を販売しているメーカーは限られるため、そこまで選択肢がない部分も少なくありません。

選べるところでは総合的に判断してセレクトし、ほかの部分ではその工具に合わせて作業する、というのが基本的な考え方です。

いろいろ説明したので難しく思えるかもしれませんが、まずは一度その工具を手にとってみる。これにつきます。

工具メーカーや工具販売(MACTOOLSなどは移動販売形式なので公式HPからお電話をして販売車両にお邪魔する形式)の方に、分からないことは質問するのもいいですね(当店では工具のご相談は承っておりません。あしからず)。

私たちよりも知識が深く、工具の修理なども行っているので想定する作業内容を伝えれば当初考えていたものよりもよい選択肢を提示していただけることもあります。

通販などでなんとなく購入するのが一番危険です。

 

「自転車店のなりかた」関連記事はこちらも参照してください。

教えてコスナ店長!自転車屋さんって、どうすればなれますか?

第1回「自転車屋さんになるにはまずはスキルと場所の整理を

第2回「自転車店は対面対応が重視されます

以上で第3回は終了です。次回は広告をどうするか。お楽しみに!