中根和宏さんに聞く、副業としての自転車店

現在、社団法人として自転車技術者協会の立ち上げのために奔走しながら、全国を飛び回る中根和宏さん。

中根さんは、自転車店を副業として開業することをすすめる活動も行っています。

近年では、減少傾向にある自転車店は、これからどうあるべきなのか。

自転車店を副業として運営することで、

人や社会にどんなメリットがあるのか。

1つずつ、コスナサイクル店長 コスナが聞いていきます。


コスナ 本日は遠いところからありがとうございます。

中根さんは名古屋にお住まいとのことですが、さきほどまで東京にいらっしゃって、そこから来ていただいて。

お車なんですか?

 

中根さん どこにでも車で行くタイプなんです。

名古屋から小田原くらいだったら近いくらいですよ。

 

コスナ えー! すごいですね。

僕はあまり長時間は厳しくて。

さっそく、今回の本題なのですが。

現在、自転車技術者の新規育成や全国の個人商店などを活気づけることを目的とする、

自転車技術者協会を立ち上げるために、各所調整を行いながら全国を行き来しているとお聞きしています。

特に、副業としての自転車業への従事を広めていく、という部分には大きく興味を持ちました。

どのような経緯で団体設立を目指されたのでしょうか。

 

中根さん はい。そもそも自分は、その昔、小さな自転車屋さんの一員として、

自転車を組み立てて全国に納品する作業をおこなっていて。

納品と組立が主な業務でしたが、かなりの台数があったので、夜は組み立て、

終われば納品という過密なスケジュールをこなしていました。

 

コスナ お時間も手間もかかる作業ですね。

 

中根さん ほかにも、営業で自転車の現品を持って全国を回ったり。

そのうち、現場との関係がより深くなっていきます。

そんな中で、職人たちの生の声をいくつも拾い集めていくようになりました。

 

中根和宏さん

中根さん そこで多く聞こえたのが「後継ぎがいない」という言葉です。

小売りでも卸しでも、後継ぎがいない。

なぜなら、技術はあるのにお客さんが来ない、量販店が安く、修理・販売するから魅力がないんだ、と。

とにかく後ろ向きになってしまっていて。

みんな、笑顔じゃあなかった。

 

コスナ 地域を選ばず、深刻な問題だと思います。

コスナサイクルのある小田原でも、よく同じ話をお聞きします。

 

中根さん そうなんです。

だからこそ、全国の自転車店をどうにか笑顔にする方法はないだろうか。

そう考えたときに、まず、お年をめされていて組立や修理を行うことが厳しくなっているのに、

近所や商圏内の自転車ユーザーが困ってしまうから修理業をやめられない、

という問題があることが分かりました。

 

コスナ なるほど。

 

中根さん お店を続けることは最大の地域貢献ではありますが、

心にも体にも大きな負担になっている。

そして、10数年前から自転車店の数は減り続けているために、

1店廃業するだけでも、近隣に修理する自転車店のない状態の人。

いわゆる“修理難民”が発生してしまうんです。

 

コスナ たしかに、遠く離れた自転車店に修理自転車を持って行くことができない人もいますね。

それでは、商圏内のユーザーのために廃業できないという状況もうなづけます。

 

中根さん サービスの提供側が疲弊していけば、消費者にとってもマイナスだし、

このような状況で営業を続けている自転車店に後継者たちは魅力を感じません。

そこで、非常に単純な話、技術を継承できる人の間口を広げればいいと考えたわけです。

自転車店というのは、ある種、世襲性のようなところがあります。

親・親戚が自転車店を運営しているので継いだ、という人が多い業界なんです。

しかし、そもそもの自転車店が少なくなっていくなかでさらに後継者が減っていると…

 

コスナ 自転車修理を行う人の分母が減少してしまう訳ですね。

 

中根さん そうなんです。

それならば、人材をほかから呼び込むしかない。

現在自転車の小売業などにかかわっている人たちだけでは足らない。

だからこそ、技術継承の一環もふくめて、副業として自転車修理業を広めることで、

あらたに自転車修理を行う人を業界の外部から増やすための仕組みづくりをしようと。

そう考えたのが設立を思い立った経緯の1つです。

 

コスナ 人材不足は国内のどのような分野においても問題ですが、たしかに自転車業界では、

ここ数年で大きな問題になるのではないかというほど深刻です。

 

中根さん メディアが取り扱わないだけで、すでになっているかもしれない。

国内の人口の多くを占める団塊の世代の中には、

免許を返納して代わりに自転車という交通手段を選ぶ人も出始めています。

しかし、購入できる場所はあっても、修理できる場所がない。

そもそも、定期的にメンテナンスが必要な乗り物です。

そのため、購入できる場所があるならば近場に修理をおこなうスポットというのは必要不可欠です。

だけれど、ない。

そこで業界に携わる人を増やすような、同じような活動をしている人がいないか探しましたが、

残念ながらいませんでした。

それではしかたないと、無鉄砲きわまりないと言われるかもしれませんが、

会社を退職して、全国の自転車店の技術継承などを後押しする自転車技術者協会立ち上げにチャレンジしたんです。

家族からも結構いろいろ言われました…(笑)。

 

コスナ (笑)。

しかし、これは社会的にも意義のある活動だと思います。

フランチャイズ制の量販店を除き、

ある程度の規模の自転車店でも、人材不足により修理に時間がかかる。

もしくは人手不足で技術の共有ができていないので、不十分な修理内容であることは、

非常に多く見受けられます。

そんな中、自転車の技術継承の問題と同時に、

量販店、ネット通販の台頭により、クオリティの善し悪しは置いておいても、

自転車専門店における自転車販売台数は落ち込んでいると思います。

それでも、私たちが取り扱うべき自転車とは、どんなものだと感じられていますか?

中根和宏さん

中根さん 私は、一番身近な移動手段だと考えています。

もっとも近しい乗り物だからこそ、

人が生活する場においてかならずと言っていいほど目にします。

ただ、メンテナンスできる場所はどうかというと、

ほとんど見かけませんね。

だから、修理しながら乗り心地や性能のいい自転車に乗っていくのではなく、

買い換えを行いながらより乗り捨てしやすい廉価なモデルを選ぶスタイルが定着しています。

そのため、質問の答えとしては、

正確には“一番身近な移動手段だけれど、メンテナンスする場所が極端に少ない乗り物”と言うほうがいいかもしれません。

 

コスナ 一昔前は、身近に自転車屋さんのある状況が当たり前でした。

それが購入を量販店など数のあるところで行うようになり、

修理のときは自転車店へ。

だけど近くにないので“修理難民”になってしまう、

それで、より乗り捨てしやすいけれど、性能の悪い安価な自転車の購入に視点がいってしまう。

 

中根さん そうです。乗りにくいとか、壊れやすい車両では消費者の満足度も低い。

自転車に魅力を感じなくなってしまいます。

それでは、市場も縮小してしまう。

だからこそ、さきほどの、副業に自転車屋を選ぶ、

という選択肢をもっと浸透させて、修理を行うことができる人材を増やさなければいけないと、

考えているんです。

 

コスナ 副業に…、という部分なのですが、中根さんが考える副業としての自転車店とは、

具体的にはどのようなものなのでしょうか。