小田原の自転車専門店

【副業としての自転車店について】自転車技術者協会代表の中根和弘さんに聞いてみました

 

中根さん まず、自転車店を始めるのに国家資格の取得がいらないことです。

自転車技師の資格というのものはありますが、

これは経験2年から取得するものなので、スタートアップの際はいりません。

一方、飲食店などでは検査や審査など、

スタートするまでに時間もお金もかかります。

また、お客さんを呼び込むのにも内装にこだわったりする必要もありますよね。

しかし、自転車修理であれば、

とりあえず近所の人などに声をかけて、修理をする場面を見せることなく、

車両の預かりで実施できます。

しかも、大きなスペースが必要かというと、それこそパンク修理などであれば自転車が置ける場所であれば、

それほど大きなスペースは必要ありません。

 

コスナ 車庫や自宅の玄関先で実施できなくもないですね。

中根和宏さん

中根さん そうなんです。省スペースで、しかも、修理にかかわる道具は使用期限が非常に長い。

仕入れたものを無駄にしない、かつ、仕入れ数をある程度調整できます。

これがさきほど例に挙げた飲食店であれば、

食材は新鮮でなければいけない、保管に冷蔵庫を用意して光熱費もかかる、調理器具も別途必要に。

 

コスナ パンク修理であれば、用意するのは、

「タイヤレバー」「レンチ」「パンク補修材」「ゴムノリ」「パンクチェックのために水をためる容器」「空気入れ」ですね。

言われてみれば、パンク補修材とゴムノリ以外は、

1度購入すれば、10年近く使用できるものばかりです。

 

中根さん 粗利率で考えてみると、相当いいんです。

修理にかかる費用のほとんどは技術料です。

この部分を養うのは時間が必要ですが、そもそもほかの副業についても、

本業と同業でない場合には一定のトレーニングが必要です。

プロの自転車店に直接指導されれば、

習得まで何年もかかる、というものではありません。

時間に関しても、お客さんがずっと目の前にいる訳ではないので、

本業終わりに修理をするといった調整もつきます。

しっかりとした自転車店からのバックアップさえあれば、

副業として十分成り立つ要素を持っているんです。

 

コスナ だからこそ、中根さんのように、このバックアップの体制を整えてくれる人が必要なんですね。

 

 

中根さん あとは、自転車店側の協力をどうとりつけるかです。

いわゆる職人気質というか、一匹狼の技術者が非常に多いんですね。

小砂恵三

コスナ たしかに、業界的には多いですね(笑)。

お客様から無愛想であると受けとられてしまう方もいます。

 

中根さん 実際、すでに自転車修理をおこないたいという人に、直接指導を行っている店舗もあります。

教えを受けた人が自転車技師の試験を受けるまでもフォローしたり。

 

コスナ そこまでいくと、副業というよりも、1人の技術者を育てているようですね。

 

中根さん まさにその通りですよね。

ほかにも、五月人形のお店さんが子供用自転車を取り扱っていたり、

乳母車専門店が自転車販売もおこなっていたりと、

顧客の属性が似通っている、もしくは商品に関連性がある場合に

既に副業として自転車小売り業に乗り出している業界もあります。

 

コスナ 初めて知りました。全国を回られている中根さん独自の視点ですね。

中根和宏さん

 

中根さん 時期限定の季節商品、もしくは一度購入していただいたお客様を、

継続して顧客として離さないための方法です。

世の中に合わせて変わっているところがある以上、私たちも変わっていかなければいけない。

 

コスナ 私の考える変化として、お客様に価値を分かってもらうということを重視しています。

知識を与えるというか。

コスナブログでもそうですが、修理や組立、自転車に関するノウハウを、ほぼすべてと言っていいほど、

細かく解説しています。

なかには、そんなに公開したらお客さんが真似してしまうのでは、

という声もありましたが…。

 

中根さん やりませんよね。実際には。

 

コスナ そうなんです。ただ、これによって、どんな風にコスナサイクルが自転車に接しているか、

どういう理念のもとに活動しているかを伝えたいと思ったんです。

実際、自転車店がA店、B店、C店とあったら、使用するケミカル製品、修理方法、使用部材など、

それぞれにやり方も仕上がりも違います。

同時に金額も変わりますが、コスナサイクルでは他店にくらべて、

性能を100%近くまで引き上げることを理念に修理をおこなっています。

そのため、他店よりも高いと言われることもあります。しかし、この金額の根拠をしめしたいと考えました。

 

中根さん 大切ですね。ここで修理したから、買い替えなくてよくなった、乗り心地がよくなった、

そういう感じる部分だけではなく、知識としても理解してもらう。

かなり身近な乗り物ですが、車なんかと比べると自転車の原理を理解している人は極端に少ない。

 

コスナ お客様目線に立てば、なんの修理だか分からないけれど、

1万円かかりました、というのはちょっと疑問符を持つ方もいらっしゃいます。

それよりも、この1万円で、どのような結果得られるのかを理解していただくほうが、お店側にも、お客様側にもいい。

 

中根さん 変に安くしてくれとか言われることもなくなりますからね。

 

コスナ これは大事なことですね。安くすることがサービスではなくて、

適正な金額をいただくことで、私たち自身が体制を整えながらお店を運営していけるようにする。

なにせ、あまりに安くすることばかりしていて自分たちが廃業することになれば、

また修理難民の方を増やすことになってしまう。

 

中根さん そうです。高い金額、ではなく、適正な金額を適切にいただくために、

情報発信というのはやはり大切ですね。

私も、HPなどを通じて、より多くの理解者を得ながら、活動を続けていきたいと思います。

 

コスナ 貴重なお話をありがとうございました。

今後のご活躍から目が離せません。

一般社団法人 自転車技術者協会