寄木細工と、これからの伝統技術のこと

寄木細工

コスナブログ編集会議でのこと。

現在にも残る伝統的な技術とはなんだろう。

と、考えながら見渡すと、事務所のいたるところに寄木細工が。

コスナサイクルのある小田原のお隣、箱根は、寄木細工の名産地です。

時計や小物入れ、お釣り用のトレーに引き出し、定期入れまで、

いたるところに寄木がありました。

でも、そもそも寄木細工って、どんなもの?

こんなに近くにあるのに、よく知りません。

寄木細工の長い歴史を、制作をおこなう“クラフトえいと”の露木孝作さんにお聞きします。


寄木細工 クラフトえいと

コスナ 本日はお店の開店中にすいません。

露木さん 大丈夫ですよ。お役にたてればいいんですが…。

コスナ いえいえ、突然おしかけてしまって。

お手数ですが、寄木細工のこと、いろいろ教えてください。

そもそも寄木細工って、伝統工芸品というジャンルでいいんですよね。

露木さん ええ、その通りです。

コスナ 美しいデザインですが、どのように制作されているんですか。

露木さん 昔は、山に生えている原木を切り倒してから製材をし、木材を寝かして、加工して、

という、かなり手間のかかる作業を制作者が一手におこなっていました。

コスナ 木を一本となると、相当な労力ですね。

寄木細工 クラフトえいと

露木さん そうですね。そうしてできあがった各部材を、今度は寄木の名の通り、

木目や色合いの違う部分を組み合わせて模様を作り、にかわでくっつけます。

最後に、この木材の固まりの表面を大きなカンナで削って、薄い木のシートを削り出して、

あとは、作った小箱などに、またにかわなどで貼り付けて完成です。

ものによって微妙な製作工程の違いはありますが、おおむねこんなところです。

コスナ 聞いているだけだと、なんとなくシンプルな工程に聞こえますが、

木材を寄り合わせたものでこれだけ隙間がないというか、

まるで最初からこういうものであったように制作されるのはすばらしい技術ですね。

寄木細工 クラフトえいと

露木さん 慣れもあります(笑)。

昔は、それこそ職人集団のような人たちが作っていました。

現在は、技術の進歩で、少し分業化がすすんでいます。

材料は静岡や群馬などに専門店があるので、そこから仕入れ、

加工を、私たちのような制作工房がおこなうようになりました。

コスナ 時代は進んでいますね。

露木さん 制作工房によっては、製材、塗装、細かな装飾の部分など、

工程によって、かなり分業化しているところもありますよ。

このあたりはそれぞれのお店で違いがあります。

コスナ 自転車と同じですね。他社の技術などを掛け合わせて1つの商品を創り上げる。

露木さん こういう分業制には、機械技術の向上と共に、実は材料の問題もからんでいます。

コスナ 木材、ですか?

寄木細工 クラフトえいと

露木さん ええ。現在は、使用する半分以上の木材が海外産です。

コスナ 環境問題によるものでしょうか。

露木さん そうです。国内で材木の伐採が制限されているので、

海外産のものが多くなりました。

コスナ 各分野、やはり製造業は、海外に頼らざるを得なくなる部分が出てきますね。

諸外国に環境的な負担を一任するのも問題はありますが…。

特に自転車で言えば、海外製には品質のばらつきがあって、

なかには製品としてちょっと…、と考えるものもあります。

露木さん 木材も似通った部分がありますが、実は、

海外産のが色合いがよくなる、という特質もあります。

国産材では出ない色合いがあるんです。

ただ、いい木材であればあるほど、その国でも伐採について慎重になるため、

今後材料の確保についてはむずかしくなっていくと思います。

コスナ 山が崩れたり、いい水が採れなくなったりと、

過剰な伐採は自然への影響も大きくなりますね。

露木さん はい。だからこそ、私たちも自然との調和に気をつかいながら、

制作をおこなっていく必要があります。

コスナ むずかしい問題ですね。制作を止める訳にもいかないですもんね。

露木さん これは、逆に言うと制作をどんどん行う必要もあるんです。

コスナ どういうことでしょうか。

露木さん 山の樹木を間引きしていかなければいけないんです。

たとえば、戦後に住宅用に植林したヒノキなんかは、

伐採にかかる費用を気にして海外産の木材の使用に切り替えたせいで、

放置され、大量の花粉を発するようになりました。

こういう木材を、いわゆる混合樹林にして、

針葉樹も広葉樹もあるような形にしていく必要もあります。

コスナ 山を放置しない。

露木さん まさにそうです。人工的に植林したことで、

害をなすようになってしまったものを人の力で間引きして、

別の木を植林するなど、環境を整えてあげる必要があります。

それには、木材を間引くしかない。

そして、間引くにもやっぱり費用がかかりますから、

切り出した木材を寄木細工やその他の部材として使用するために購入する。

コスナ ああ−、そういうことは一般人では、なかなか考えつきませんね。

寄木細工 クラフトえいと

露木さん 戦後の住宅建築ブームに合わせて植林された後、

こういった樹木はただ、そのままにされてきました。

過剰なものは、いつでもよい結果を生みません。

今後は、海外産よりも多少金額が高くとも、

国内産の木材を使用することを考えていかなければ、人間と自然が共存できる環境保全は成していけません。

もちろん、寄木細工の制作に限った話ではありませんが。

コスナ 考え続けなければいけないお話ですね。

ここで知ることができてよかったです。

ちょっとベクトルは変わりますが、寄木細工の最近の人気ってどのようなものなんでしょう。

露木さん 少し前、昭和35〜40年くらいの間に、こけしなんかの制作物に負けてしまったことがあって。

この時期は売れる量も少なく、職人の数もかなり少なくなりました。

その後少し盛り返してきて、現在は日本人のライフスタイルが変化したことで、

また売り上げや職人数が落ちてきた、というところですね。

コスナ こけしも寄木と同じような伝統的な工芸品ですね。

流行もあるとはいえ、売り上げ的にも大分キツイ時期が…。

露木さん いや、実を言うと、小田原って全国の工芸品を作る場所でもあるんです。

コスナ 全国、ですか?

露木さん たとえば、小田原で加工した木材使用の商品に北海道と銘を入れて現地で売ったり、

いろいろな地方のお土産物の製作をしたりするんです。

吊るしものとかね。

だから、こういう商品を作ることで、

寄木自体の売れ行きは悪くても、つないできたというところがあります。

コスナ そうなんですか。じゃあ、たとえば九州なんかでお土産に買ったものが…。

露木さん 小田原産という可能性もありますね。

寄木細工 クラフトえいと

コスナ (笑)そうでしたか。

露木さん まあ、食品にも同じようなものがあって。

長野で買ったお漬け物が、帰宅してよく見たら小田原で作られていたということも…(笑)。

寄木も、こういったものの恩恵で生き残ってきたと言えます。

コスナ さまざまなモノ創りをおこなう中で、また技術も磨かれたり。

露木さん そうですねえ、そもそも技術力が高いから、多種多様なものが作れるとも言えるかもしれませんね。

コスナ こういう高い技術というのは、どのようにつむがれてきたのでしょうか。

露木さん そもそも寄木って、日本だけのものと思われている人もいるようなんですが、

実は世界同時多発的に興ったのでは、という見解もあるんですね。

コスナ 他国にも同じようなものがあるんですか。

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